niconicoのマルチデバイス対応をして得たデザインの必要性

niconicoのマルチデバイス対応をして得たデザインの必要性

2016.03.15
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ノウハウ

こんにちわ。ドワンゴ鈴木慎之介です。

今回は、2016年現在、約4年近く携わっている、TVやゲーム機等のマルチデバイス展開において、戦略をすすめる上で必要なデザインにおいて、デザイン経験の無かった私が得た「デザインの必要性」についてお話しします。なお、今回はマルチデバイスとはいえスマートフォンやタブレット等のメジャーなスマートデバイスについてはあえて触れませんが、デバイスの種類にとらわれないような、汎用的な形になるよう記載してみましたので、なにかの折に参考にして戴けると幸いです。

niconicoマルチデバイス展開の目的

niconico_device
さて、私の経歴はこちらで記載しましたが、長らく、ゲーム機やテレビ等のコンシューマーデバイス向けniconicoアプリを搭載する事業を行ってきました。なぜこれを進めてきたのか? これは過去数年間に渡り、色んなところで話してきましたが、主に以下2点が理由となります。

1. 新しいユーザーを獲得する

「自分のところにいないユーザー」を獲得することが(当たり前の話ですが)プラットフォーム拡大の戦術として定石なわけですが、ことniconicoについては、2011年マルチデバイス展開の開始当初、ファミリー層や、小中学生等の低年齢層が手薄だったこともあり、このユーザーを獲得することが必要でした。そのため、niconicoにいないユーザーを抱えているハードウェアプラットフォームにniconicoアプリを搭載し、niconicoユーザーとデバイスユーザーの相互送客を行う形で新規ユーザーを獲得しています。

2. 獲得したユーザーを滞留させる

私の初めての投稿にも書きましたが、獲得後は、ユーザーを止まらせ、長らくプロダクトを使ってもらい、サービスのコアユーザーになってもらうことを念頭に設計します。Webでいうと、離脱率等のKPIで示されているものです(ちなみに個人的に離脱前提の言葉が馴染まなかったため、定着率や継続率等の言葉でワーディングしています)。

アプリデザインの課題設定

application
さて、目的を定義したあとは手法です。ざっくりいうと、マルチデバイスに搭載するniconicoはあくまでサービスのビューワを実現することが展開と同義になります。では、ビューワーとはなにか? ということを掘り下げてみましょう。

niconicoはユーザーやプロの皆さんがつくったコンテンツをお預かりして、配信するプラットフォームです。具体的には、ユーザーにとってわかりやすく列挙されたコンテンツに対して、ユーザーが目的のものに到達し、即座に到達されることが最低限提供すべきユーザー体験を行うことが課題ということになります。この課題を解決するため大まかに以下のポリシー

課題「編成を行い、視認性を高め、うろうろさせるアプリを、デバイスに溶けさせる

これを定義し実現するためのビューワーのデザインを行うこととしました。

課題解決のためのデザインプロセス

process

1. 編成を行う

コンテンツを抱えるプラットフォームとしてはユーザーの属性(セグメント)に沿ったジャンルを見つけ出し、その中のコンテンツを並べる、すなわちコンテンツが嗜好される編成をしていくことが重要です。

今回のケースでいうと、ゲームであれば任天堂ゲーム機やソニーゲーム機を利用するユーザーが嗜好するコンテンツとして、ゲームやアニメ、テレビであれば(基本的には全年齢ですが)ファミリーや高年齢層ユーザーが嗜好するコンテンツとして囲碁将棋やスポーツ、動物等で並べる形でコンテンツ編成を行いました。実際に対応デバイスをお持ちの方はご存知かもしれませんが、niconicoのPCやスマホアプリ等とは違ったジャンルのコンテンツが表示されているかと思います。

2. 視認性を高める

さて、ジャンルが定義されたら、あとはコンテンツのリスティングを行うわけです。リスティングにおいて列挙するものを厳密に定義すると、動画そのものではなく、動画のタイトルや再生回数、画像サムネイル等の「メタデータ」です(動画を切り出したライブサムネもありますが、今回は便宜上サムネに含めます)。これらの情報を必要最低限かつ、瞬時でコンテンツの概要や人気度合いを理解できる形で配置するシンプルなUIで表現することが重要です。

3. うろうろさせる

大体の場合は上記2までやれば導線としては普通の出来だと思います。しかし、ここでどうしても書きたいのは、敢えてすぐにコンテンツに到達させないということです。コンテンツの視聴の巡回ルートというものは人間にとって生活習慣みたいなものです。朝起きたときの行動を例に考えてみましょう。起床後、例えば、カーテンを開け、トイレへ行き、洗面台で歯を磨いて、朝ごはんの準備をする、こういった行動が日々繰り返し行われているわけです。これは生活習慣なので変える必要はないですが、繰り返し行われている習慣は無意識下に行われており、それは単純な行動として膠着化させ、ある種思考停止となり、余計な行動を取らなくなってしまいます。

ユーザーにしてみれば理路整然と設計された導線に対して利便性を感じますが、コンテンツ配信プラットフォームからすれば、行動バリエーションが少なくなり、他のコンテンツやジャンルの視聴が薄まり、ロイヤリティが下がってしまう可能性があります。ですので、自分が見ようとしたもの以外のコンテンツも敢えて出すような、すこし体験としては引っかかる、うろうろさせる、ようなことをさせ、他のものへの気付きを持たすことも時に必要だと思います。最近では当たり前な、ユーザーの趣味嗜好から機械的に抽出したレコメンド等が合理化の最たる例ですが、本当にそれをそのまま出すべきか、今一度考えみるのもよいかもしれません。

もちろん、ユーザビリティを下げる可能性があるため、ユーザーのストレスと、長期的に与えられるメリットのトレードオフになるという、難易度の高い設計になることは言うまでもありませんが、昨今プロダクトが同質化している現在において、そのような設計が差別化の要因になることもあるため、覚悟を持ってやってるみるのも手かと思います。

デバイスに溶けさせる?

melt
さて、もう一つのテーマ「デバイスに溶けさせる」とは何でしょうか。
スマートフォンやタブレットは、どのユーザーも、ライフスタイルでも活用できるよう入力も出力もシンプルなインターフェースで設計されているため、独自機能と呼ばれるものは薄く、PCをハンドヘルドできるようなプロダクトでデザインされていますが、ゲーム機やテレビ等の専用機はそれぞれのユースケースがある程度決まっているため、それぞれ独特なインターフェースや独自機能が搭載されていることが往々にしてあります。それらの特徴に対して以下2点のアプローチを行いました。当たり前ですが、当たり前だからこそ入念にデザインしたポイントでもあります。

1. デバイス由来のトーンへUI/UXをフィッティング

どのデバイスでもそうですが、アプリケーションの起動メニューやダウンロードするショップのデザインはハードウェアの外観等のテイストに沿って設計されています。niconicoのアプリケーションは当初クリエイティブのアクが強いものでしたが、ことマルチデバイスへの展開については、起動の心理的障壁を下げるため、「デバイスの公式アプリ」に準ずるぐらいのクリエイティブのトーンでプラットフォームに合わせる工夫をしました。

2. 独自機能へのフィッティング

独自機能、例えばゲーム機でいうと入力デバイスが挙げられます。上下左右のコントローラーや、決定/キャンセルキーがあり、人間が思った行動に沿うようにキーアサインを行ったり、テレビでいうとテレビリモコンで以下にコメント入力をさせるかなど、様々な工夫を行いました。特に、テレビリモコンおけるコメント入力はリモコンの特性上、日本語入力が難しく、niconicoに於いて重要な問題でした。しかし、開発チームが「かんたんコメント入力(略して:かんこめ)」を編み出してくれたおかげで、入力のハードルはかなり改善しました。他にもWii Uでは、テレビとGamePadの2画面の構成を特性を活かした「カラオケ画面構成」や、ニンテンドー3DSでは「すれちがい機能」や「3Dコメント」等、デバイスそれぞれ、様々な工夫を行い、他の動画視聴アプリとは違った「楽しませる」という方向の差別化を行いました。過去、いくつか記事として取り上げて頂きましたので、お時間あるときに御覧ください。

デザインの必要性

need
これまで記載したものの実現は、要件定義や機能設計から順当に行うと時間がかかります。しかし、デバイスで動作するアプリケーションはUX的にユーザーと利用スタイルを想像してビジュアルイメージ等も含め総合的に勘案してデザインすることで、最短のアウトプットが行えます。ただし、プロダクトオーナーやプロジェクト責任者と密なコミュニケーションをとる、すなわち上流工程に入って思考することが必要ですので、会社組織や、デザイナーの思考パターンによっては現実的に難しいかもしれません。しかし、これが最短かつ最適な手法であることは世の中の潮流を見ても明らかですので、ぜひとも思考や行動を実践に移してみてください。

そして、もちろんドワンゴではそれができます。
ご興味ある方、ご連絡ください

 

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この記事を書いたメンバー

shinno

shinno

Former General Manager

鈴木慎之介, マルチデバイス企画開発部長, デザイン戦略室長(先代)。2016年9月まで、ドワンゴデザイナー組織の統括、及び次世代プロダクト開発手法及びユーザーテストの研究、コーポレートクリエイティブを監修。いまでも心はデザイナー。

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