Web、アプリ、そしてすべてにつながるボードゲームの「デザイン」

ドワンゴデザイナーのkskです、こんにちは。
好きなボードゲームは『カルカソンヌ』『ドミニオン』『アヴァロン』です。
僕はデジタルなゲームも大好きですが、ボードゲームも大好きです。
今回はボードゲームに関して、ゲームのルールやストーリーなどのいわゆる「ゲームデザイン」ではなく(釣り気味なタイトルですみません…!)ゲームに使用されるカードやコンポーネント自体の意匠デザインについて考えてみたいと思います。
「意匠デザイン」という大きな括りを考えたときに、それが形を持ったプロダクトであれ画面上に展開するWebやアプリであれ、根底にあり大切にしなければならないものは変わらないと考えています。今回は(僕の)身近にあるボードゲームを手にとっているときに感じていることをまとめてみました。
ボードゲームのデザインに求められるもの
ユニバーサルなデザイン
「ユニバーサルデザイン」とは、文化・言語・国籍が違っても、障害・能力の如何を問わずに利用することができるデザインを指します。ボードゲームではある程度のお約束を把握している人が集まれば、使用する言語が異なる人たちでもそのコンポーネントが何を意味しているかが掴め、ゲームが進行できるように情報がアイコン化されていたり、モチーフが選ばれたりしています。
たとえば、ゲーム内で価値を示すためにはよく金貨(コイン)や宝石のモチーフが使われます。洋の東西を問わずおカネは大事!ということでしょうか。

金貨だったり小判だったり宝石だったり…
とにかく「価値」を示すものたち

さまざまなゲームの「人」を示す駒。形は様々ですが、「人」であることは伝わります。
盤上の自分だったり仲間だったり…
ミニマルであること
カードやゲームの盤面など、「限られた表示領域に必要な情報を過不足無く表示すること」が求められます。ゲームを進行するたびにいちいち説明書を見てルールや役割を確認するようでは興ざめしてしまいます。また、ゲームの種類によってはカードを見ていられる時間が、ごく短いものもあります。目の前にあるもので必要な情報をすぐに判断し、戦略を練ることができないとスムーズにゲームが進行できません。
たとえば2つのチームに分かれるようなルールの場合、ぱっと見て自分がどちらの陣営かがわかるようにデザインされていると、迷うこと無くゲームに入れます。

『ワンナイト人狼』の繁体中文版。中文が読めなくても、どちらの陣営かはすぐに分かります。
©ワンナイト人狼
ストーリーや背景を想起させるようなビジュアル
上記の2点を踏まえたうえで、それぞれのゲームがもつ世界観を想起させるようなビジュアルをもたせると、ゲームに奥行きを感じさせることができます。単に数字が書かれているだけのカードでも用としては足りるかもしれませんが(実際それで成立し、面白いゲームはたくさんあります)、そこにストーリーやキャラクターが付加されることにより、一層その世界に没入することができるのではないでしょうか。

『ダンジョンオブマンダム』のモンスターカード。
数字とアイコンだけあればゲーム自体は進行可能ですが、強力な数字に強そうなモンスターを描くことで
ビジュアル的にも「強敵である」演出が加わります。
© Oink Games Inc.
すべてのデザインに共通すること
上記の考えは、ボードゲームに限らずWebやプロダクトのデザインにもそのまま当てはめることができます。ユーザーが利用する環境や言語は必ずしも同一ではないことが多い時代ですし、スマートフォンなどをターゲットにしたアプリは表示領域も限られています。それらを前提として情報設計をしたうえで、デザインをしていくことが大切です。
ボドゲのすすめ
ボードゲームは、決められたルールを守りながら、人と人が様々な思惑を交錯させ有機的に変化する状況に対応し、定められた勝利条件を満たす…というものです。全体戦略を考え、状況に応じて適切な手を打っていくという思考はいろいろなものに応用可能なことではないでしょうか。
…というわけでみなさん、ビジネスに応用可能な思考訓練の手法として(言い訳)ボードゲームをしましょう。コンポーネントの手触り、対面でゲームをすることによる相手の感情の機微や緊張感の伝わりなどなど、デジタルなゲームとはまた違った面白さが詰まっています!